妊婦の歯周病|赤ちゃんへの影響と原因、安全な治療法を解説
2026年3月7日

妊娠中の女性の皆さん、お口の健康について不安を感じていませんか。妊娠中は体のさまざまな変化により、歯ぐきの腫れや出血といったトラブルが起こりやすくなります。これらの症状は、単なる一時的な不調だと軽視されがちですが、実はお腹の赤ちゃんにまで影響を及ぼす可能性がある「歯周病」のサインかもしれません。
この記事では、なぜ妊娠中に歯周病になりやすいのか、その具体的な原因から、もし歯周病になってしまった場合に赤ちゃんにどのようなリスクがあるのかを詳しく解説します。さらに、妊娠中でも安全に受けられる治療法や、ご自宅でできる効果的な予防策まで、分かりやすくご紹介します。
正しい知識を身につけることで、皆さんが安心してマタニティライフを送り、元気な赤ちゃんを迎えられるよう、この記事がその一助となれば幸いです。お口の健康は、お母さんと赤ちゃんの未来につながる大切な第一歩です。ぜひ最後まで読み進めてみてください。
妊娠中に歯ぐきの悩みはありませんか?歯周病のリスクと対策
「妊娠してから歯ぐきが腫れやすくなった」「歯磨きのたびに出血するようになった」など、妊娠中にこのようなお口の悩みを抱えている方はいらっしゃいませんか。実は、これは多くの妊婦さんが経験する非常に一般的な症状で、医学的には「妊娠性歯肉炎」と呼ばれています。妊娠中の女性の半数以上が経験するとも言われており、決して珍しいことではありません。
妊娠性歯肉炎は、妊娠による体質的な変化が大きく関係しており、初期の段階では自覚症状が少ないこともあります。しかし、この状態を放置してしまうと、本格的な歯周病へと進行する可能性があります。歯周病は、歯を支える骨が溶けてしまう病気で、進行すると歯を失うだけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼすことが知られています。
特に、妊娠中の歯周病は、お母さん自身だけでなく、お腹の赤ちゃんにもさまざまなリスクをもたらす可能性が指摘されています。そのため、妊娠中に見られる歯ぐきの腫れや出血といったサインを見逃さず、その原因と適切な対策を理解することが、お母さんと赤ちゃんの両方の健康を守るために非常に重要です。この先のセクションでは、妊娠中に歯周病のリスクが高まる具体的な原因について、さらに詳しく見ていきましょう。
なぜ?妊娠中に歯周病になりやすい4つの原因
妊娠中は、女性の体が大きく変化する特別な期間ですが、この時期に歯周病のリスクが高まるのには、具体的な理由があります。単に「体質が変わるから」といった漠然とした理由ではなく、科学的な根拠に基づいた4つの主要な原因が存在します。これから、女性ホルモンの変化、つわり、唾液の変化、そして食生活の変化という4つの視点から、妊娠中に歯周病になりやすくなるメカニズムについて詳しくご説明します。
女性ホルモンのバランスの変化
妊娠中に歯周病になりやすくなる最も大きな理由の一つが、女性ホルモンのバランスの急激な変化です。特に、エストロゲンとプロゲステロンという2つのホルモンが、口腔内の環境に大きく影響を与えます。
妊娠中はエストロゲンの分泌が著しく増加します。このエストロゲンは、歯周病の原因となる特定の細菌、特にプレボテラ・インターメディアなどの歯周病原性細菌の増殖を促進する作用があります。これらの細菌は、エストロゲンを栄養源として利用することで、通常よりも活発に増えやすくなるのです。
また、プロゲステロンの増加も歯ぐきに影響を与えます。プロゲステロンには、血管を拡張させる作用があり、これにより歯ぐきの毛細血管が充血しやすくなります。その結果、わずかな刺激でも歯ぐきが炎症を起こしやすくなり、腫れや出血といった症状が現れやすくなります。これが「妊娠性歯肉炎」が起こりやすい主要なメカニズムの一つです。
つわりによる口腔ケアの質の低下
つわりは、多くの妊婦さんが経験するつらい症状の一つですが、これが口腔衛生の質を低下させる大きな原因となります。吐き気があるため、歯ブラシを口に入れること自体が苦痛に感じたり、歯磨き粉の味や匂いがさらに吐き気を誘発したりすることがあります。また、体調不良で横になる時間が長くなり、歯磨きをする気力すら湧かない日もあるでしょう。
このような状況では、毎食後の丁寧な歯磨きが難しくなり、どうしても歯磨きがおろそかになりがちです。その結果、食べカスやプラーク(歯垢)が除去されずに口の中に残りやすくなります。プラークは歯周病の原因菌の塊であり、これが蓄積することで歯ぐきの炎症を引き起こし、歯肉炎のリスクをさらに高めてしまうのです。
唾液の性質の変化
妊娠中は、唾液の性質にも変化が見られることがあります。多くの場合、唾液の分泌量が減少し、普段よりも粘り気が増す(粘稠度が高まる)傾向にあります。唾液には、口の中の食べかすや細菌を洗い流す「自浄作用」や、虫歯の原因となる酸を中和する「緩衝能」という重要な働きがあります。
唾液の分泌量が減って粘り気が増すと、これらの自浄作用や緩衝能が低下してしまいます。これにより、口の中の細菌が洗い流されにくくなり、食べかすも残りやすくなるため、細菌が繁殖しやすい環境が作られてしまいます。結果として、虫歯だけでなく歯周病のリスクも高まることにつながるのです。
食生活の変化
妊娠中は、つわり対策や空腹感を紛らわすために、食事の回数が一時的に増え、「ちょこちょこ食べ」が多くなることがあります。また、食の嗜好が変わり、酸っぱいものや甘いものを好むようになる方も少なくありません。これらの食生活の変化は、口腔環境に大きな影響を与えます。
食事の回数が増えたり、糖分や酸っぱいものを摂取する機会が増えたりすると、口の中が酸性に傾く時間が長くなります。酸性の環境は、虫歯菌や歯周病菌の活動を活発にし、増殖を促してしまいます。これにより、歯周病だけでなく、虫歯のリスクも高まってしまうため、食生活の変化が口腔トラブルの引き金になることがあるのです。
放置は危険!妊婦の歯周病が赤ちゃんに及ぼす3つのリスク
妊娠中の歯周病は、お母さんのお口の中だけの問題にとどまらず、お腹の中の赤ちゃんにまで影響を及ぼす可能性があります。これは決して、必要以上に不安を煽るものではなく、正しい知識を持って適切な行動をしていただくための大切な情報です。これから、歯周病が赤ちゃんに及ぼす可能性のある「早産・低体重児出産」「妊娠高血圧症候群」、そして「赤ちゃんへの菌の感染」という3つのリスクについて詳しく解説していきます。
早産・低体重児出産のリスクが約7倍に
歯周病が早産や低体重児出産のリスクを高めることは、多くの研究で指摘されています。お口の中にいる歯周病菌は、歯ぐきの炎症が進行すると、その菌が出す毒素や炎症性物質を体内に放出します。特に「プロスタグランジン」と呼ばれる炎症性物質は、血流に乗って子宮に到達し、子宮の収縮を促してしまう可能性があるのです。
その結果、本来の出産予定日よりもかなり早い時期に陣痛が始まってしまう「早産」や、赤ちゃんが平均よりも小さく生まれる「低体重児出産」のリスクが高まると考えられています。歯周病のない妊婦さんと比較して、歯周病の妊婦さんでは、これらのリスクが約7倍にも高まるという報告もあり、お口の健康が赤ちゃんに与える影響の大きさがうかがえます。
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)との関連
歯周病は、お口の中だけの病気ではなく、全身の健康状態にも深く関わっています。その一例として、妊娠高血圧症候群(かつては妊娠中毒症と呼ばれていました)との関連が指摘されています。
歯周病によって歯ぐきに慢性的な炎症が続くと、その炎症が全身に広がり、血管にも影響を与えることがあります。これにより、血圧の上昇などを引き起こす妊娠高血圧症候群の発症リスクを高める可能性が示唆されているのです。お口のトラブルが、お母さんの命にも関わる重大な合併症につながる可能性があることを認識しておくことが大切です。
赤ちゃんへの虫歯菌・歯周病菌の感染リスク
生まれてくる赤ちゃんの将来の口腔健康にも、お母さんの歯周病が影響を及ぼす可能性があります。生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には、虫歯菌も歯周病菌もほとんど存在しません。しかし、成長とともに、主に身近な大人、特に母親から菌が感染することが知られています。これは「母子感染」と呼ばれ、例えば、スプーンの共有や、食べ物の口移し、頬へのキスなどのスキンシップを通じて菌が赤ちゃんのお口に入り込んでしまうのです。
妊娠中にお母さんのお口の中の虫歯菌や歯周病菌の数を減らしておくことは、赤ちゃんへの感染リスクを低減させることにつながります。お母さんが健康な口腔環境を保つことが、お子さんの将来の虫歯や歯周病予防の第一歩となることを忘れないでください。
妊娠中でも安心!安全な歯周病治療の進め方
妊娠中に歯周病の治療が必要だとわかっても、「お腹の赤ちゃんに影響はないだろうか」「どんな治療ができるのだろう」といった不安を抱える妊婦さんは少なくありません。しかし、適切な時期と方法を選べば、妊娠中でも安心して歯科治療を受けることが可能です。このセクションでは、妊婦さんが治療を受けるのに最適なタイミング、具体的にどのような治療が受けられるのか、そして多くの方が疑問に思うレントゲン撮影や麻酔、薬の使用に関する安全性について、一つひとつ詳しくご説明していきます。
歯科治療のベストタイミングは安定期(妊娠16週~27週)
妊娠中の歯科治療には、最も適した時期があります。原則として、多くの歯科治療は妊娠中期にあたる「安定期(妊娠16週から27週頃)」に行うのが最適とされています。この時期は、つわりが落ち着いて体調が安定している妊婦さんが多く、流産のリスクが最も低い期間であるため、安心して治療に臨むことができます。
また、お腹がまだそれほど大きくないため、歯科診療台で仰向けになる姿勢も比較的楽に保つことができます。これにより、長時間の治療でも身体的な負担が少なく、リラックスして治療を受けることが可能です。ただし、虫歯が神経まで達して強い痛みがある場合や、歯ぐきの腫れがひどく我慢できない場合など、緊急性のある治療が必要な場合は、妊娠時期を問わず行う必要があります。その際は、必ず担当の歯科医師と産婦人科医が連携を取り、母子の安全を最優先に治療計画を立てますのでご安心ください。
妊娠中に受けられる基本的な歯周病治療
妊娠期間中に安全に実施できる歯周病の基本的な治療は、主に歯科衛生士による専門的なクリーニングが中心となります。これは、歯周病の原因となる歯垢(プラーク)や歯石を徹底的に除去する処置です。
具体的には、歯ぐきの上にある歯石を取り除く「スケーリング」という処置が行われます。さらに、必要に応じて歯周ポケットの深い部分に付着したプラークや歯石、汚染されたセメント質を除去する「ルートプレーニング」という処置も行われることがあります。これらの処置は、歯周病の進行を抑え、歯ぐきの炎症を改善するために非常に効果的であり、妊娠中でも母子への影響を心配することなく安全に受けられます。痛みを伴う場合は局所麻酔を最小限で使用することもありますが、その安全性については次のセクションで詳しくご説明します。
歯周病治療に関するQ&A|レントゲン・麻酔・薬の影響は?
妊娠中に歯科治療を受ける際、多くの方が不安に感じるのが、レントゲン撮影や麻酔、そして薬の使用が赤ちゃんに与える影響ではないでしょうか。このセクションでは、そうした具体的な疑問に対して、一つひとつ丁寧にお答えしていきます。正しい知識を得ることで、安心して治療を受けていただけるよう、詳しく解説します。
Q1. レントゲン撮影は赤ちゃんに影響しますか?
歯科用のレントゲン撮影は、お腹の赤ちゃんへの影響はほとんどないとされています。その主な理由はいくつかあります。
まず、撮影する部位が口元に限定されており、お腹からは離れています。さらに、歯科で使用するレントゲンは、医科用のレントゲン撮影に比べて放射線の量が極めて微量です。加えて、撮影時には必ず放射線を遮断するための防護用の鉛エプロンをお腹に着用していただきます。これにより、お腹の赤ちゃんが放射線にさらされるリスクは最小限に抑えられます。診断のためにレントゲン撮影が必要な場合は、これらの対策を講じることで安全に撮影できますのでご安心ください。
Q2. 治療の麻酔は使っても大丈夫ですか?
歯科治療で一般的に使用される局所麻酔薬は、妊娠中でも比較的安全であると考えられています。これらの麻酔薬は、胎盤を通過しにくい性質を持つため、お腹の赤ちゃんへの影響は少ないとされています。
歯科医師は、妊婦さんの状態を考慮し、安全性の高い麻酔薬を選択し、必要最小限の量を使用します。むしろ、麻酔を使わずに痛みを我慢することで生じるストレスや、痛みによる血圧上昇などの影響の方が、母体や赤ちゃんにとって良くない影響を与える可能性があります。痛みを感じたまま治療を受けるのは精神的にも大きな負担となりますので、安心して麻酔治療を受けていただくことをおすすめします。
Q3. 痛み止めや抗生物質は服用できますか?
歯科治療後に痛みや炎症が強い場合、痛み止めや抗生物質が処方されることがあります。歯科医師は、妊娠中でも比較的安全に使用できるとされている薬を慎重に選択して処方しますのでご安心ください。
例えば、痛み止めとしては「アセトアミノフェン」が第一選択となることが多く、抗生物質では「ペニシリン系」など、過去の症例から安全性が高いと判断されているものが選ばれます。大切なのは、自己判断で市販薬を服用せず、必ず歯科医師や産婦人科医に相談の上、処方された薬を指示通りに正しく服用することです。もし薬に関して心配なことがあれば、遠慮なく歯科医師や薬剤師に相談してください。
今日からできる!妊娠中の歯周病セルフケアと予防法
妊娠中は体調の変化も多く、歯科医院での治療に抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。しかし、日々のセルフケアを少し工夫するだけでも、歯周病の予防に大きく役立ちます。このセクションでは、ご自宅で今日から実践できる、簡単かつ効果的なセルフケアと予防法を具体的にご紹介します。ぜひ、ご自身のペースで取り入れ、健康な口内環境を維持してください。
つわりで歯磨きが辛い時の工夫
つわり中は、歯ブラシを口に入れるだけでも吐き気がしたり、歯磨き粉の匂いが不快に感じたりと、普段通りの歯磨きが困難になることがあります。しかし、歯磨きを全くしないとプラーク(歯垢)がたまり、歯周病のリスクが高まります。そこで、つわり中でも無理なく口腔ケアを続けられるよう、いくつかの工夫をご紹介します。
まず、ヘッドの小さい歯ブラシに変えてみましょう。口の奥まで入れやすくなり、刺激が軽減されることがあります。また、香料の強い歯磨き粉が苦手な場合は、無香料のものを選ぶか、いっそ歯磨き粉を使わずに水だけで磨くのも一つの方法です。体調の良い時間帯に磨くようにしたり、一度に全部磨こうとせず、何度かに分けて短時間で済ませたりするのも効果的です。どうしても歯磨きができない時は、水や刺激の少ない洗口液でうがいをするだけでも、口の中の汚れを洗い流し、細菌の増殖を抑えることができます。
歯ブラシと歯間ブラシを使った丁寧なブラッシング
歯周病予防の基本は、毎日の丁寧なブラッシングです。ただゴシゴシと力任せに磨くのではなく、正しい方法で優しく磨くことが大切です。歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に45度の角度で当て、小刻みに動かす「バス法」は、歯周ポケット内のプラークを効果的に除去できるとされています。歯ぐきを傷つけないよう、軽い力で優しく磨くことを心がけてください。
また、歯ブラシだけでは、歯と歯の間や、歯並びが複雑な部分のプラークを完全に除去することはできません。そのため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することが非常に重要です。デンタルフロスは歯と歯の隙間が狭い部分に、歯間ブラシは隙間が広い部分に使うことで、歯ブラシが届かない汚れを効果的に取り除けます。これらの補助器具を毎日のケアに取り入れることで、歯肉炎のリスクを大きく減らすことができるでしょう。
バランスの良い食事で歯ぐきの健康を保つ
歯周病の予防には、毎日の食事も大きく関わっています。歯や歯ぐきの健康を保つためには、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く摂取することが不可欠です。特に、歯ぐきのコラーゲン生成を助けるビタミンCや、骨の健康の基礎となるカルシウムなどは、意識して摂りたい栄養素です。これらの栄養素は、歯ぐきの免疫力を高め、炎症が起こりにくい健康な状態を維持するのに役立ちます。
一方で、糖分の多いおやつや甘い飲み物を頻繁に摂取することは控えましょう。糖分は口の中の細菌のエサとなり、酸を作り出すことで歯周病や虫歯のリスクを高めます。もし甘いものを口にした場合は、食後なるべく早く歯を磨くか、うがいをするなどして、口の中に糖分が残る時間を短くするよう心がけてください。規則正しい食生活と口腔ケアの組み合わせで、口の中を健康に保ちましょう。
自治体の「妊婦歯科健康診査」を積極的に活用しよう
妊娠中の口腔ケアをサポートするため、多くの自治体では「妊婦歯科健康診査」という制度を設けています。これは、母子健康手帳の交付時などに、妊婦さんを対象とした無料、または安価で受けられる歯科健診の受診券が配布されるというものです。
この制度を活用することで、ご自身の口腔内の状態を専門家である歯科医師や歯科衛生士にチェックしてもらい、適切なアドバイスを受けることができます。妊娠中に特有の口腔トラブルの早期発見や、適切なセルフケア方法の指導など、プロの目線からのサポートは、妊婦さんの不安を和らげることにもつながります。お住まいの市区町村の窓口やホームページで、この制度が利用できるか、どのような内容かを確認し、ぜひ積極的に活用してみてください。
産後の口腔ケアも重要!母子で健康な歯を維持するために
出産を終え、赤ちゃんとの新たな生活が始まっても、お口のケアの重要性は変わりません。育児に追われる毎日の中で、ついご自身のケアは後回しになりがちかもしれません。しかし、お母さんの健康は赤ちゃんの健康にも直結する大切な要素です。このセクションでは、産後に口腔トラブルが起きやすい理由と、生まれたばかりの赤ちゃんのケアで気をつけるべき点について詳しくご説明します。
なぜ産後も口腔トラブルが起きやすいのか
出産後も、お口の中の環境は変化しやすく、トラブルが起きやすい時期が続きます。その主な理由として、育児中心の生活になることで、ご自身の生活習慣が不規則になりがちという点が挙げられます。例えば、赤ちゃんのお世話の合間に急いで食事を済ませたり、空腹感を紛らわすために間食が増えたりと、「ちょこちょこ食べ」が多くなる傾向があります。これにより、お口の中が酸性に傾く時間が長くなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
また、睡眠不足や慣れない育児による疲労は、お母さんの免疫力を低下させます。免疫力が落ちると、細菌に対する抵抗力が弱まり、歯ぐきの炎症が起きやすくなります。さらに、赤ちゃん優先の生活になるため、ご自身の歯磨きの時間が十分に取れなかったり、丁寧にケアする余裕がなくなったりすることも少なくありません。出産後もホルモンバランスが完全に安定するまでには時間がかかるため、妊娠中に引き起こされた歯ぐきの炎症が長引きやすい状態にあることも、口腔トラブルが増える要因の一つと考えられます。
赤ちゃんの口腔ケアで気をつけるべきこと
生まれてくる赤ちゃんの口腔ケアは、乳歯が生え始める前からスタートできます。歯が生える前の赤ちゃんには、授乳後などに清潔なガーゼやコットンを指に巻いて、優しく歯ぐきを拭ってあげる習慣をつけることをおすすめします。これにより、お口の中を清潔に保つだけでなく、赤ちゃんがお口を触られることに慣れる良い機会にもなります。
最初の乳歯が生えてきたら、乳児用の柔らかい歯ブラシを使って、優しく磨き始めましょう。最初は無理せず、お口の中に歯ブラシが入ることに慣れさせることが大切です。そして、何よりも大切なのは、先ほども触れた「母子感染」の予防です。生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には虫歯菌や歯周病菌はほとんど存在しません。しかし、スプーンの共有や、大人が噛んだものを赤ちゃんに与える「口移し」、そしてキスなどのスキンシップを通じて、お母さんや家族から赤ちゃんへと菌が感染してしまうことがあります。
赤ちゃんの将来の虫歯や歯周病のリスクを低減させるためにも、食器は分け、口移しは避けるなど、菌の感染を予防する意識を持つことが非常に重要です。そして、親子で一緒に定期的に歯科健診を受ける習慣をつけ、家族みんなで健康な歯を維持していくことを目指しましょう。
まとめ:妊娠中の歯周病ケアは、未来の赤ちゃんへの最初のプレゼント
今回は、妊娠中に歯周病になりやすい理由、そしてそれがお腹の赤ちゃんに与える可能性のある影響、さらには妊娠中でも安心して受けられる治療法と日々のセルフケアについて解説しました。
妊娠中は、女性ホルモンの変動やつわり、食生活の変化など、さまざまな要因が重なり、お口の中の環境が変化しやすい時期です。そのため、歯ぐきの腫れや出血といった歯周病の症状が出やすくなります。しかし、歯周病を放置してしまうと、早産や低体重児出産のリスクが高まったり、妊娠高血圧症候群との関連が指摘されたりするなど、お母さんだけでなく赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があります。
もちろん、妊娠中の歯科治療は「赤ちゃんへの影響はないだろうか」と不安に感じるかもしれません。しかし、多くの歯科治療は体調が安定している妊娠中期であれば安全に受けることが可能です。レントゲン撮影や麻酔、薬の服用に関しても、歯科医師が妊娠を考慮した上で慎重に判断し、安全性の高い方法を選んでくれますので、必要以上に心配する必要はありません。
何よりも大切なのは、日々の丁寧なセルフケアです。つわりで歯磨きが辛い時の工夫を取り入れたり、歯ブラシだけでなく歯間ブラシやデンタルフロスを活用したりすることで、お口の中を清潔に保ち、歯周病のリスクを減らすことができます。また、お住まいの自治体が提供している妊婦歯科健康診査を積極的に活用し、専門家によるチェックやアドバイスを受けることも非常に有効です。
妊娠中の口腔ケアは、単にお母さん自身の健康を守るだけでなく、生まれてくる赤ちゃんへの大切な「最初のプレゼント」でもあります。健康な歯ぐきと清潔な口内環境は、赤ちゃんが健やかに育つための土台作りの第一歩です。安心してマタニティライフを過ごし、可愛い赤ちゃんを迎えるためにも、今日からできる歯周病ケアをぜひ始めてみてください。
少しでも参考になれば幸いです。
自身の歯についてお悩みの方はお気軽にご相談ください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
東京歯科大学卒業後、千代田区の帝国ホテルインペリアルタワー内名執歯科・新有楽町ビル歯科に入職。
その後、小野瀬歯科医院を引き継ぎ、新宿オークタワー歯科クリニック開院し現在に至ります。
また、毎月医療情報を提供する歯科新聞を発行しています。
【所属】
・日本放射線学会 歯科エックス線優良医
・JAID 常務理事
・P.G.Iクラブ会員
・日本歯科放射線学会 歯科エックス線優良医
・日本口腔インプラント学会 会員
・日本歯周病学会 会員
・ICOI(国際インプラント学会)アジアエリア役員 認定医、指導医(ディプロマ)
・インディアナ大学 客員教授
・IMS社VividWhiteホワイトニング 認定医
・日本大学大学院歯学研究科口腔生理学 在籍
【略歴】
・東京歯科大学 卒業
・帝国ホテルインペリアルタワー内名執歯科
・新有楽町ビル歯科
・小野瀬歯科医院 継承
・新宿オークタワー歯科クリニック 開院
龍ケ崎市・竜ヶ崎駅の歯医者
『小野瀬歯科医院』
TEL:0297-62-0130



