過蓋咬合とは?噛み合わせが深すぎると起こるリスクと治療法
2025年6月21日

小野瀬歯科医院です。
過蓋咬合について不安や疑問を感じている方は多いのではないでしょうか。
特に笑顔を見せる時や人前で話す時に悩まれる方が多いと思います。
歯科医療の現場でも過蓋咬合に関する相談は非常に多く、正しい知識とタイミングが重要とされています。
今回は、過蓋咬合の基本情報から、原因、改善策などをわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、ご自身やご家族の過蓋咬合に対する不安が解消し、安心して正しいケアができるようになります。
歯茎や歯周組織への影響
過蓋咬合が重度の場合、下の前歯が上の歯茎に強く接触することがあり、歯茎を傷つけたり、炎症を引き起こしたりする可能性があります。
これが続くと、歯茎の退縮(下がる)や歯周組織へのダメージにつながることがあります。
歯周病のリスクも高まり、将来的に歯を失う原因となる可能性も否定できません。
顎関節への影響
過蓋咬合は顎関節に負担をかける大きなリスクとなります。
噛み合わせが深いために顎の動きが制限されやすく、顎関節に無理な力が加わることで、顎関節症(口を開け閉めする際に音が鳴る、痛む、口が開けにくいなどの症状)を引き起こす可能性があります。
この顎関節への負担は、頭痛や肩こりといった全身の不調につながることもあります。
その他の体の不調
過蓋咬合は口腔内の問題に留まらず、様々な全身の不調を引き起こす可能性があります。
噛み合わせのバランスが崩れることで、食べ物をうまく噛み砕けなくなり、胃腸に負担がかかることがあります。
また、発音に影響が出る場合や、口を閉じにくくなることで口呼吸を誘発しやすくなり、感染症にかかりやすくなることも考えられます。
さらに、噛みしめる筋肉に過剰な力がかかることで、エラの張りが目立つといった審美的な問題につながることもあります。
過蓋咬合の治療法
過蓋咬合を治すためには、歯科医院での専門的な治療が必要です。
治療の目的は、見た目の改善だけでなく、将来的な口腔内の健康維持と全身の健康への悪影響を防ぐことにあります。
治療の目的
過蓋咬合の治療の主な目的は、上下の歯の適切な噛み合わせを確立することです。
上の前歯と下の前歯の被さり具合を正常な範囲に改善し、奥歯も含めた全体の噛み合わせのバランスを整えます。
これにより、歯や顎にかかる過剰な負担を軽減し、将来的に起こりうる歯の摩耗、破損、歯周病、顎関節症などのリスクを低減することを目指します。
また、見た目の改善や咀嚼機能、発音の改善も重要な目的となります。
具体的な治療方法
過蓋咬合の治療方法にはいくつかの選択肢があり、患者さんの年齢やお口の状態、過蓋咬合の程度によって最適な方法が異なります。
主に矯正治療が中心となりますが、場合によっては他の治療法が併用されることもあります。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、歯に装着したブラケットにワイヤーを通し、歯を段階的に動かしていく一般的な矯正治療法です。
過蓋咬合の治療においても広く用いられており、複雑な症例にも対応が可能で、歯の傾きや位置を細かく調整することができます。
奥歯の高さの調整や前歯を歯茎側に移動させるなどして、深い噛み合わせを改善します。
費用は一般的に60万円から130万円程度となることが多いですが、症例や使用する装置によって異なります。
治療期間は症例によって差がありますが、一般的には1年半から3年程度かかることがあります。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の装置を装着して歯を動かす治療法です。
比較的目立たないため、見た目を気にされる方に選ばれることが多いです。
過蓋咬合の状態によってはマウスピース矯正単独での治療が可能であり、特定の装置(バイトランプなど)を併用して奥歯の沈み込みを防ぎながら前歯の噛み合わせを改善することもあります。
軽度から中等度の過蓋咬合に適応されることが多いですが、重度の場合はワイヤー矯正との併用が必要となるケースもあります。
費用は30万円から100万円程度が目安とされています。
治療期間は1年から2年程度が目安ですが、マウスピースの装着時間によって変動する可能性があります。
外科矯正
過蓋咬合の原因が顎の骨格的な問題に大きく起因している重度の症例の場合、外科矯正が必要となることがあります。
これは、顎の骨を切って移動させる手術と歯列矯正を組み合わせて、骨格的な不正を根本的に改善する治療法です。
保険適用となる場合がありますが、入院が必要となるなど患者さんの負担も大きくなります。
骨格の不調和が大きい場合に検討される治療法であり、矯正治療だけでは改善が難しいケースに適用されます。
その他の装置
過蓋咬合の治療には、ワイヤー矯正やマウスピース矯正に加えて、補助的に様々な装置が使用されることがあります。
子供の成長期においては、顎の成長を誘導する目的で床矯正装置やバイオネーターなどの取り外し可能な装置が用いられることがあります。
また、矯正用インプラント(歯科矯正用アンカースクリュー)を顎の骨に一時的に埋め込み、それを固定源として歯を効率的に移動させることもあります。
これらの装置は、個々の症例に応じて治療計画に組み込まれます。
子供の過蓋咬合の治療
子供の過蓋咬合は、成長期にあるため大人とは異なるアプローチが可能です。
早期に発見し適切な時期に治療を開始することで、顎の正常な成長を促し、問題を軽減または解消できる可能性があります。
7歳頃からの治療開始が推奨される場合が多いです。
3歳児健診での指摘
子供の過蓋咬合は、3歳児健診で指摘されることがあります。
この時期はまだ乳歯列が完成した段階であり、基本的な噛み合わせの状態を確認する重要な機会です。
3歳児健診で過蓋咬合の傾向が見られる場合、すぐに矯正治療を開始するわけではありませんが、指しゃぶりなどの悪習癖がないかなどを確認し、経過観察を行うのが一般的です。
早期に問題に気づくことが、その後の適切な対応につながります。
子供の治療開始時期
子供の過蓋咬合の治療を開始するのに適した時期は、一般的に顎の成長が活発な時期である7歳頃が良いとされています。
この時期に治療を始めることで、顎の成長をコントロールし、骨格的な問題を改善できる可能性が高まります。
永久歯への生え変わりが進む中で、顎のバランスを整える治療を行うことで、将来的に本格的な矯正治療が必要なくなる場合や、治療が短期間で済む場合があります。
ただし、個々のお子さんの成長段階や過蓋咬合の原因によって最適な治療開始時期は異なります。
過蓋咬合の予防
過蓋咬合は完全に予防することが難しい場合もありますが、日常生活における意識や習慣の見直し、そして歯科専門家による早期のチェックと指導によって、リスクを減らし、状態の悪化を防ぐ予防につながります。
日常生活での予防策
過蓋咬合の予防や悪化を防ぐためには、日常生活での習慣が重要です。
幼少期からの指しゃぶりや舌で歯を押す癖、下唇を噛む癖などの悪習癖を改善することが推奨されます。
これらの癖は、歯や顎の成長に影響を与える可能性があります。
また、正しい姿勢を保つことや、よく噛んで食べる習慣を身につけることも、顎の健全な発達を促し、予防につながります。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合は、マウスピース(ナイトガード)の使用が有効な予防策となります。
専門家への相談
過蓋咬合の予防や早期発見のためには、定期的に歯科医院で専門家によるチェックを受けることが非常に重要です。
特に子供の場合、保護者の方が気づきにくい場合でも、歯科医師が噛み合わせの状態を専門的な視点から評価し、過蓋咬合の兆候やリスクを早期に発見することができます。
必要に応じて、適切な生活習慣の指導や、早期の矯正治療介入の検討など、個々の状況に合わせた予防的なアプローチやアドバイスを受けることができます。
少しでも参考になれば幸いです。
自身の歯についてお悩みの方はお気軽にご相談ください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
東京歯科大学卒業後、千代田区の帝国ホテルインペリアルタワー内名執歯科・新有楽町ビル歯科に入職。
その後、小野瀬歯科医院を引き継ぎ、新宿オークタワー歯科クリニック開院し現在に至ります。
また、毎月医療情報を提供する歯科新聞を発行しています。
【所属】
・日本放射線学会 歯科エックス線優良医
・JAID 常務理事
・P.G.Iクラブ会員
・日本歯科放射線学会 歯科エックス線優良医
・日本口腔インプラント学会 会員
・日本歯周病学会 会員
・ICOI(国際インプラント学会)アジアエリア役員 認定医、指導医(ディプロマ)
・インディアナ大学 客員教授
・IMS社VividWhiteホワイトニング 認定医
・日本大学大学院歯学研究科口腔生理学 在籍
【略歴】
・東京歯科大学 卒業
・帝国ホテルインペリアルタワー内名執歯科
・新有楽町ビル歯科
・小野瀬歯科医院 継承
・新宿オークタワー歯科クリニック 開院
龍ケ崎市・竜ヶ崎駅の歯医者
『小野瀬歯科医院』
TEL:0297-62-0130